お口の中のデキモノ

ふと鏡を見たときや、舌で触れたときに「お口の中に口内炎とは違うデキモノがある」「固いしこりや膨らみがある」「痛まないけれど消えないブツブツがある」と不安を感じたことはありませんか?
お口の中(口腔粘膜・舌・歯ぐき・口底・頬粘膜・唇など)に発生するデキモノ(腫瘤・病変)には、自然に治癒する軽度なものから、手術による摘出が必要な良性腫瘍、さらには早期発見・早期治療が生命や機能を左右する「口腔がん(悪性腫瘍)」に至るまで、多種多様な種類が存在します。
笠原デンタルオフィスでは、日本口腔外科学会専門医をはじめとする経験豊富なドクター陣が、お口の中のデキモノに対する精密な診査・診断を行っております。
日本口腔外科学会「専門医」による正確な診査

お口の中のデキモノは、見た目(視診)や触った感覚(触診)が似ていても、組織の内部で起きている病態が全く異なるケースが少なくありません。
当院には、基幹病院の口腔外科で長年にわたり多種多様な口腔粘膜疾患・腫瘍処置に携わってきた「日本口腔外科学会 専門医」が在籍しております。
良性病変と悪性病変(がん)の微細な境界線や、組織の病理学的変化を見極める専門的知見に基づき、安心感だけに頼らない科学的根拠に基づいた診断を行っております。
「怪しい病変」に対する迅速な大学病院・基幹病院連携

お口のデキモノの中には、組織の一部を採取して病理検査(生検)を行ったり、大規模な画像診断(MRIやPET-CT等)を必要としたりするケースが存在します。
当院では、専門医の診査において少しでも悪性(口腔がん・前癌病変など)が疑われる場合、あるいは当院の設備下での処置が適さない高度難症例と判断された場合は、躊躇なく速やかに連携している高度医療機関(大学病院口腔外科・がんセンター等)へご紹介(紹介状の発行)いたします。
医療機関としての適切な役割分担を厳守し、患者さまの生命と安全を最優先とする医療体制を整えております。
お口の中のデキモノの種類
アフタ性口内炎(難治性アフタ含む)

境界が鮮明な数ミリの円形または楕円形の潰瘍で、表面が白または黄色の膜(偽膜)で覆われ、強い接触痛を伴います。
免疫力の低下、ストレス、ビタミン不足、物理的刺激などが原因で発生し、通常は1週間〜2週間程度で自然消退します。2週間以上治らない場合は別の病変を疑う必要があります。
咬傷・外傷性潰瘍(義歯性潰瘍)
誤って頬や舌を噛んだり、尖った歯や合わない義歯(入れ入れ歯)が擦れ続けることでできる潰瘍や膨らみです。
慢性的な機械的刺激が長期間加わり続けると、細胞の異形化を引き起こす原因となるため、刺激原因を取り除く処置が必要です。
肉芽腫(炎症性肉芽・エプーリス)
歯ぐき(歯肉)に発生するキノコ状または瘤(こぶ)状の赤く柔らかい膨らみです。出血しやすい傾向があります。
歯石や不適合な被せ物の刺激、妊娠中のホルモンバランスの変化(妊娠性エプーリス)などによって局所で組織が過剰に増殖することで生じます。
粘液嚢胞(粘液留置嚢胞・ラヌーラ)
下唇の内側、舌の裏側、あるいは口底(ベロの下)にできる、小豆大〜大豆大の透明または青紫色のぷっくりとした柔らかい膨らみです。潰れると粘り気のある液体が出て小さくなりますが、再び溜まって再発を繰り返します。
唾液を出す管(小唾液腺の導管)が噛み癖などで傷つき、唾液が組織内に漏れ出て溜まることで発生します。
歯根嚢胞(しこんのうほう)

歯の根の先端付近(歯ぐきの深部)にできる嚢胞です。初期は無症状ですが、進行すると歯ぐきが固く腫れ上がり、押すと鈍痛が生じたり、膿が出たりします。
むし歯の放置や不十分な根管治療により、根の中で細菌が繁殖して慢性的な病変を作ることが原因です。当院では精密根管治療や外科的アプローチで対応いたします。
乳頭腫(にゅうとうしゅ)
舌、頬粘膜、唇などにできる、カリフラワー状あるいはブロッコリー状の白いイボ状のデキモノです。通常は痛みを伴いません。
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染や局所的刺激が関与しているとされています。
線維腫(せんいしゅ)
頬の内側や舌の縁など、歯が当たりやすい場所にできる、正常な粘膜と同じ色をした固めの境界鮮明な出来物です。
慢性的にお口の中を噛む刺激や、適合の悪い義歯の継続的な当たりが原因で、結合組織が増殖したものです。
血管腫(けっかんしゅ)・リンパ管腫
唇や舌、頬粘膜にできる赤紫色や青紫色の柔らかい膨らみで、圧迫すると退色(色が薄くなる)するのが特徴です。
外骨症(骨隆起:こつりゅうき)

下顎の内側(小臼歯の裏側)、上顎の天井の中央部(口蓋隆起)、または歯ぐきの外側にできる、岩のように固い突起物です。表面の粘膜は正常なピンク色をしています。
強い歯ぎしり、食いしばり(クレンチング)、あるいは過度な咬合圧(噛む力)によって顎の骨が刺激を受け、肥大化・隆起したものです。
腫瘍や病気ではないため基本的に放置して問題ありませんが、義歯の作製に支障が出る場合や、会話・食事で頻繁に当たって痛む場合は外科的に削り取る手術(骨隆起除去術)を行います。
白板症(はくばんしょう)

舌の縁、頬の内側、歯ぐきなどにできる、擦っても取れない白い斑点や板状の病変です。初期は無症状ですが、進行すると表面がザラザラしたり、赤みが混ざったり、潰瘍を形成して痛みを伴うようになります。
白板症の約5%〜15%程度が将来的に口腔がんに移行すると学術的に報告されています。定期的な経過観察または病理生検が必要です。
紅板症(こうばんしょう)
粘膜が鮮やかな赤色になり、境界が比較的明瞭な病変です。食べ物が染みたり、接触痛を伴うことが多いのが特徴です。
非常に高い確率(約50%近く)でがん化する、またはすでに初期の不顕性口腔がんが含まれている可能性があるため、早期の専門的処置が必要です。
舌がん(ぜつがん)[口腔がんの中で最も頻度が高い:約40%]

舌の側面(脇)や裏側に多く発生し、舌の表面(中央部)に発生することは稀です。
初期は「治りにくい口内炎」や「白い硬いしこり」として現れ、痛みが少ないこともあります。進行すると表面が潰瘍化して出血し、強い痛みや口臭、舌の動きにくさ(構音障害・摂食障害)が生じます。
歯肉がん(しにくがん)[約20%〜25%]
歯ぐきに発生するがんです。初期は歯周病やエプーリスと見分けがつきにくく、歯が揺れたり、歯ぐきが不規則に腫れたりします。安易に抜歯を行うと、抜歯後の傷口からがん細胞が急速に増殖する危険性があります。
頬粘膜がん・口底がん・硬口蓋がん
頬の内側、ベロの下の柔らかい領域(口底)、あるいは上顎の天井部分にできる悪性腫瘍です。
日本国内における口腔がんのデータと出典
罹患数および死亡数の推移データ
欧米諸国では口腔がんの罹患数が減少・横ばい傾向にあるのに対し、日本国内においては高齢化や危険因子の増加に伴い、罹患数・死亡数ともに増加傾向が続いています。
日本国内における口腔・咽頭がんの罹患数
国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」のデータによると、日本国内における口腔・咽頭がんの年間罹患数は2000年代の約1万人未満から、近年では年間約2万人以上へと飛躍的に増加しています。
(出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」全国がん登録データ)
死亡数の推移
年間死亡数も7,000人以上(口腔・咽頭がん合計)に達しており、「口内炎だと思って放置していた」「単なる歯ぐきの腫れだと思っていた」ことによる発見の遅れが問題視されています。
主な危険因子(リスクファクター)

口腔がんの発生には、日常的な環境的刺激や生活習慣が大きく関与しています。
喫煙および飲酒
たばこの煙に含まれる化学的致がん物質と、アルコールが代謝される際に発生するアセトアルデヒドによる粘膜刺激(両方を併用する場合、リスクは数倍から十数倍へ跳ね上がります)。
慢性的な機械的刺激
合わない不適合義歯の継続的な当たり、尖ったむし歯の放置、あるいは傾斜した歯が舌や頬に日常的に擦れ続けることによる物理的刺激。
口腔衛生状態の不良
プラーク(細菌)の放置による慢性的な粘膜の炎症状態。
「普通の口内炎」と「危険なデキモノ(がん等)」の見分け方
患者さまご自身で判断することは非常に危険ですが、医療機関を受診すべき危険なサイン(レッドフラッグ)についてまとめました。
| チェック項目 | 普通のアフタ性口内炎 | 危険なデキモノ(腫瘍・がん等) |
|---|---|---|
|
治癒までの期間 |
1週間〜2週間程度で自然に消退する |
2週間〜3週間以上経過しても治らない・拡大する |
|
痛み(痛覚) |
食べたとき・触れたときに強い激痛がある |
初期は無痛(痛まない)のことが多い |
|
硬さ(感触) |
全体的に柔らかい |
病変の基部(根元)に固い「しこり」がある |
|
境界(フチ) |
赤く滑らかな境界で鮮明 |
境界が不鮮明で、不規則なギザギザ・隆起がある |
|
表面の状態 |
中央が凹んだ滑らかな膜 |
ザラザラしている、出血しやすい、白と赤が混ざる |
|
発生部位 |
口腔粘膜のどこにでも発生する |
舌の側面(脇)や口底(ベロの下)に多い |
※「痛くないから大丈夫」という自己判断は最も危険です。
初期の口腔がんは痛みを伴わないことが多いため、「2週間以上消えないデキモノ」が存在する場合は、速やかに歯科・口腔外科を受診してください。